コロナショックの話題が口の端に上らなくなった頃、証券口座を見てふと気づいたことがあった。 「優待口座」「高配当口座」は含み益が着実に増えていくのに対し、「メイン口座」だけはあまり増えていない。もちろんすべての口座がプラスではある。しかし、含み益の額が明らかに違った。
売買が頻繁だから含み益が消えているのかとも思ったが、そもそもメイン口座での売却は損切りのほうが多い。 ここでようやく気づいた。 自分は短期投資が下手なのだ。
短期投資はゼロサムゲームで、他の市場参加者に勝たなければ利益は出ない。 長期投資はプラスサムになりやすく、売買タイミングで天国と地獄が分かれるようなことは少ない。
■ 振り分けた証券口座を見て考えたこと
私は開発の仕事をしており、詰まっているときは仕事時間外でも頭が仕事に引きずられる。 株だけに集中することが難しい。 EDPという人工ダイヤモンドの会社は評判を聞いて飛びついたし、半導体は自分が業界の真実を知りすぎていたために需給を無視したトレードをしてしまった。
みんなが騒いで飛びつく株は、業績よりも需給で動く。 自分にはまったく向いていなかった。
一方で「優待」「高配当」は話題株ではなく、業績と配当利回り・優待内容を見て買っていた。 これらは長期で上がっていく流れを、自分は先取りして買っていたのだ。
証券口座を分けたことにも副次的な効果があった。 毎日の値動きが口座ごとに異なるため、どの銘柄が上がり、どれが下がっているかを大枠で把握しやすくなった。
■投資勉強会で起きた出来事
そんなとき、投資勉強会向けに「グリッチ(業績不振ではなく投資などで一時的に利益が落ちている状態)」の銘柄を見つけた。 社長の願望だけで語っている会社も多いが、この会社は利益の裏付けがあり、赤字にならないよう調整している姿勢も信じられた。
勉強会のテーブル(6人ほど)で説明したところ、反応は良くなかった。 「そんな話は信じられない」と言われ、あまり良い印象ではなかった。
しかし1ヶ月後、別のオンライン勉強会があり、EXCELに銘柄と投資理由を書く欄があり、主催者が発表する形式だった。 そこに、私が挙げた銘柄と“まったく同じ理由”が書かれていた。
もちろん社長のIR説明から同じ考えに至った可能性もある。 だが、私が説明した内容と時期が完全に一致していた。証拠はないがパクられたと感じた。
■ 投資アイデアを「自分のもの」として語る人たち
銘柄をパクって儲けるのは良い。私もよくやる。 しかし、それを“自分が考えたように”語るのはどうにも我慢できなかった。
開発の仕事をしてきた私は、他人のアイデアを盗むことを完全な悪だと感じてしまう。 だから他人の素晴らしい投資アイデアがあっても、呑みの席で話題に出す程度で、誰のアイデアかも必ず説明していた。 少なくとも、自分が投資アイデアとして出す銘柄は、拙くても必ず自分で探したものを語るようにしていた。
勉強会は短期投資家が多い。 チャートはボリンジャーバンド+MACD+RCI/RSIの組み合わせが定番。 私が以前、小遣い稼ぎには使えたが「コツコツドカン」になりやすいとして捨てた手法だ。 そのような人は日常的に銘柄を業績で考えず需給で考えるので勉強会で銘柄を出すことが難しいのだろう。大枠は立派なのに歯抜けの多い説明をする人を何度も見かけた。「◯◯さんが言ってたから。詳しいことはわからない」という人も多い。せめてその◯◯さんの意図を完全に理解してから話をして欲しい。
そもそも短期投資家はなぜ長期投資のアイデアを聞くのか? 結局、長期で上がっていく流れの“美味しい部分だけ”を短期で取ろうとするためではないか。
長期投資のアイデアを短期投資家に教えることが、バカバカしくなっていった。
■ 勉強会から離れたことで得たもの
銘柄パクられ事件でショックを受けた私は投資勉強会に出なくなった。
メリットは大きかった。 怪しげな情報に触れなくなり、話題株も聞かなくなった。 私はもともとテーマ株投資が得意ではない。売り時がわからないからだ。
頻繁に勉強会に出ていた私が突然出なくなったので、周囲は「投資で大損して退場した」と思っているかもしれない。
実際はその逆で、この頃から現在に至るまで、毎年過去最高の投資利益を更新し続けている。 「優待」「高配当」だけでなく、損失が多かった「メイン」も含み益を積み上げるようになった。
■ 次のステージ:オルタナティブ投資へ
私は次のステージに進み始めた。 オルタナティブ投資である。
ウェルスナビのCMではインデックス投資を富裕層の投資と言っていたが、それは“攻め”の投資だ。 本当の富裕層は一部“守り”の投資をする。
よく言われる「資産の三分割」について考えてみた。 一般には「現金・預金」「株式(有価証券)」「不動産(土地・建物)」に分けて保有しろというものだ。
デフレからインフレに転換している今、「現金」をそのまま持つ選択肢はない。 「不動産」は知識がなく、今から直接持つのは難しい。
◯ 現金セクタ:円安とドル建て資産
円安で日本円の価値が落ちている。 だから米ドルを持つようにした。 米ドルをそのまま持つのはもったいないので、米ドル建て債券や米ドル建て株式を検討した。
暗号通貨は政治リスクがあるため避けていたが、最近は各国政府がステーブルコインを出すなど無視できなくなってきた。 ただし暗号通貨ETFは日本の証券会社ではまだ買えないようなので、将来に回すことにした。
金は配当がないため避けていたが、各国通貨が長期的に価値を目減りする中で、相対的に価値が落ちない金に向かうのは自然だと考えた。 長期的に金の価値が上がり続けているのはそのためだろう。 そこで金ETFを購入するようにした。
◯ 不動産セクタ:J-REITから不動産デジタル証券と海外REIT ETFへ
まずはJ-REITを買ってみた。 すぐに「長期的には株式と違うが、短期的には株式と似ている」ことに気づいた。 調べると、J-REITは銀行が多く保有しており、決算時期に損失穴埋めのため理不尽な売りが出るらしい。 不動産としてJ-REITを主軸にするのは無しだと判断した。
SBI証券で「不動産セキュリティトークン」が目についた。 不動産を証券化し、ブロックチェーンでセキュリティを高めるものだが、売買市場がほぼなく利回りも低い。保留とした。
最近、三井物産系のAlternaという不動産デジタル証券を扱う会社を知った。 利回りはJ-REIT並で、購入後は基本的に売買がなく、一定期間後に償還される。 これなら毎日の値動きに翻弄されない。インフレが続く限り合理的だと感じた。
調べると、Alternaの扱う商品は不動産セキュリティトークンと同じで、SBI証券のページにも同じ物件があった。 説明がうまいのだと思った。
海外不動産にも目を向けた。 欧米では古い建物が大事に使われ続けるため、超長期では不動産価値が上がる。 日本は新築神話が強く価値が落ちやすい。 そこで欧米REITを検討し、今年からドル転して購入している。
オルタナティブ投資は守りの投資なので、大きく増えなくても良い。 ただしインフレには勝ちたいと思っている。
■ 投資遍歴の終わりに
ここまで連続9回にわたり、2026年8月時点までの投資遍歴を書き連ねてきた。 今後も状況に応じて変更はあるだろうが、そのときにはまた追加していくつもりだ。
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